インプラントは虫歯にはなりませんが、歯ブラシを怠るとインプラント周囲炎と言われる歯周病と同様な状態になり、最悪の場合、インプラントの除去に陥ることもあります。そういった状況に陥る前に、定期検査に通院したり、軽度のうちに治療をすることが大切です。
インプラント周囲炎になる確率は、インプラントを入れた方の2~14%くらいとも推測されています。
インプラント周囲炎は、歯周病と同じような状態になるのが特徴です。初期段階では、ほとんど自覚症状がなく、
1. インプラント周囲の歯茎が腫れる
2. 出血する
3. 膿がでる
などからはじまります。インプラント周囲の骨吸収が進行すると、インプラントが揺れ始めます。 状態によっては痛みもでてきます。残念ながら、このインプラント周囲炎に触れているホームページは非常に少ないようです。
従って、『インプラントは必ず一生ものだ』と思われている方もおられるかもしれませんが、それは誤解です。長持ちさせるためには、ご自身の歯と同様、あるいはそれ以上に適切な診断・維持管理が必要です。インプラント周りの細胞組織は天然歯の周りより単純な構造になっているため、一度細菌感染をしてしまうと症状の進行が早いという特徴があります。現在、インプラント治療後のトラブルで最も多いのがこのインプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎の治療には、まず診断が大切であり、歯周病の検査と同じような事を行います。
1. インプラント周囲のポケットの測定
2. 出血の有無
3. 排膿の有無
4. 動揺度
5. X線写真
6. 細菌検査
7. 噛み合わせ
などを診査します。
重度歯周病の患者様にインプラントを行った場合、歯周病になっていない患者様に行ったときと比べ、明らかに失敗率が多くなる、というデータがあります。
ある報告によると、インプラント成功率は通常90数%台ですが、歯周病の歯を 残したまま行われたインプラントの成功率は70数%台まで下がるそうです。これは、天然歯の歯周ポケット内細菌が、インプラントの周囲組織に悪影響を及ぼすことが原因である、と考えられています。歯周病が重症になっても自覚症状に乏しいのと同様、インプラント周囲炎も自覚症状が出たときには、大きな問題に発展している可能性があります。インプラント周囲炎の治療は、歯周病の治療より更にやっかいです。
歯周病は、『歯肉の病気』です。
主に歯周ポケットと呼ばれる、歯の周りの隙間に存在する歯周病菌が、有害な物質を出し、その影響で歯の周りの骨が吸収されて行きます。
この場合、歯周病菌は骨にまで大量に進入することはありません。一方、インプラント周囲炎には、下記のような特徴があると言われています。
・ 歯周病菌と同じ細菌が、炎症の原因となっている
・ 天然歯の歯周病に比べ、インプラント周囲炎は進行が著しい
・ インプラント周囲炎では、人工歯根部と支台部の接合部に強い炎症が起こる
場合によっては、歯周病菌が骨の中まで入り込む。インプラントは、生体にとってあくまで異物です。従って、健全な天然歯に勝るものではありません。インプラントの周囲は天然歯より明らかに炎症が強く起こります。歯周病が進行してしまった天然歯は、その形状が複雑なので、歯磨きなどによる細菌の除去が難しくなります。その為、進行を食い止めるのは困難です。それに対し、インプラントは、歯磨きなどによる清掃が容易で、適切な管理さえすれば進行した歯周病の歯を無理に残すより、長持ちする場合もあります。
もし万が一インプラント周囲炎を発症させてしまった場合、治療が必要となってきます。初期の段階で発見された場合は、機械や薬剤を用いて、歯の表面や歯周ポケット内に付着した歯垢や細菌を徹底的に取り除きます。発見が遅れて、インプラントを支えている骨の著しい吸収が見られるような場合には、歯肉を切開する外科手術を行い、内部の汚れを取り除きます。この際、インプラントの素材であるチタンの表面に他の金属で触れてしまうと、術後に骨との結合を妨げる恐れがあるので注意が必要です。
インプラント周囲炎を防ぐには、下記の項目について、実践することが重要です
・ ご自身による、正しい方法で行う、時間をかけた歯磨き
・ 専門家による定期的な徹底清掃
・ 専門家によるかみ合わせの管理
外科処置を行った後にも尚経過が思わしくない場合には、インプラントを摘出する手術が行われます。早い段階で処置を施せば摘出の後、骨の吸収が起こっていないかなどの経過を観察し、再度インプラントを行う事も可能ですが、周囲炎を長期間放置するとどんどん骨を吸収し、組織が脆くなってインプラントを再度埋め込む事が難しくなります。その際は、骨を再生する治療を施さなければいけません。インプラント周囲炎の早期発見のためにも、歯科医の適切な指導を受けましょう。