上顎洞底挙上術ともいい、上顎骨の再生手術です。
上顎骨の内部には上顎洞(サイナス)と呼ばれる鼻腔へとつながっている大きな空洞が存在します。この空洞は様々な要因がきっかけとなり、拡大する傾向を持っています。
上の奥歯を失ってしまうと、上顎洞が下に拡大してくると同時に失った歯の顎の骨も痩せていくので骨の厚みが加速度的に減少していきます。そのためインプラントを埋入する顎の骨の高さが不足することとなります。
インプラントは、埋入したときにしっかりと骨で固定されていることが大原則です。
顎の骨の高さが5mm以下の症例では、インプラントを埋入しても先端が上顎洞に飛び出してしまい固定できません。仮に埋入したとしても安定せず、すぐに抜けてしまいます。
そこで上顎洞底までの骨の厚みが5㎜以下と少なく、インプラントの固定が困難な場合、サイナスリフト法で上顎洞の底部を押し上げ、そこに自家骨や骨補填材を入れることによって不足した骨を補いインプラントを埋入する骨の厚みを確保することができます。
骨の高さが1~5ミリしかない場合でも、この方法を行うと10数ミリのインプラントを埋入することができます。
顎の骨に充分な厚みがある場合は、サイナスリフトとインプラント埋入を同時に行います(一回法)。しかし、著しく顎の骨が吸収されているケースでは、最初にサイナスリフトを行い、骨が安定するまで4~6ヶ月ほど治癒期間を置きます。
サイナスリフト法を用いますと、治療期間が通常より約6ヶ月~1年程度長くなるというデメリットがありますが、確実に骨を増やし、インプラントを植立することができます。
また、顎の骨が5ミリ以下の場合は仮に「入れ歯」を入れても土台が柔らかく固定されないため安定性が非常に悪く、インプラントのほうが効果的です。
(1)上あごの上の部分には「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞があります。歯が健康な状態では、図のような状態になっていますが、歯が欠損すると、上顎洞の大きさに変化が起きる場合があります。
(2)歯槽膿漏やむし歯が原因で奥歯が抜け落ちてしまった場合、歯槽骨の吸収が進行し(骨がやせていく状態)、図のように上顎洞が拡大する可能性があります。歯の抜けた場所の骨がどんどん薄くなるに従い、その上部の骨もどんどん薄くなっていくからです。
(3)歯槽骨の厚みが少なくなると、インプラントの固定が困難になり、埋入できなくなリます。
そこでサイナスリフトという治療が適応されます。サイナスリフトの『サイナス』とは上顎洞のことで上顎洞を『リフト』(上げる)という意味です。
(4)上顎洞の底部には上顎洞粘膜という柔らかい組 織があります。「サイナスリフト法」では、この上顎洞の粘膜を押し上げて、挙上によって出来た粘膜の下のスペースに、移植骨や骨補填材を移植します。上顎洞をあげて、骨を移植することによりあごの骨の厚みが増え、人工的に歯槽骨を補強できます。
(5)この骨の補強により、インプラントを埋入する事が可能になります。
(1)右上大臼歯部にインプラント埋入を計画。
(2)上顎洞の側方の歯肉を剥離します。
(3)上顎洞側壁の骨を削り、窓を開けます。この小さな窓から上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げます。
(4)上顎洞粘膜が持ち上がってできたスペースに、骨あるいは人工骨を填入します。
(5)上顎洞の側壁を戻し、歯肉をもとに戻します。
(6)骨が成熟したら、インプラントを埋入します。