上顎の小臼歯から大臼歯にかけて骨が少ない場合、短いインプラントでは十分支えられない時や、インプラント自体を入れられない時に上顎洞粘膜を持ち上げる方法です。上顎の歯槽骨の上部(頬骨の奥)には、上顎洞(サイナス)という大きな空洞があり、これが鼻腔へとつながっており粘膜で覆われています。上顎の骨は下顎の骨に比べてやわらかく、様々な要因がきっかけで、空洞は拡大する傾向を持っています。もし、上の奥歯を失ってしまえば、上顎洞が下方に拡大していき、また同時に失った歯の周囲の歯槽骨が吸収されて歯槽骨の厚みが加速的に減少していくのです。上顎にインプラントを入れるためには、上顎洞に到るまでの中に、インプラント体を収める必要があります。そのため上顎の骨の厚みが足りない方の場合サイナスリフトによって骨の高さを確保する必要があります。骨の厚みを増すために行われる方法です。主に、上顎洞と上顎の歯槽骨との距離が狭く、ソケットリフトが行えない場合に選択される方法です。サイナスリフトは、骨の厚みが3~5ミリ以下の場合や、多数の歯が欠損している場合でも十分対応可能な治療法です。
もとの歯槽骨の厚みがある程度ある場合、サイナスリフトとインプラント埋入を同時に行いますが(一回法)、著しく歯槽骨が吸収されているケースではまずサイナスリフトを行い、骨が安定するまで治癒期間を置き、その後、インプラントを埋入していきます(二回法)。
ソケットリフトは、サイナスリフトと比べて、患者様への負担も軽く、リスクの少ない簡単で安全な手術です。粘膜を拳上させるときのアプローチする場所の違いで、サイナスリフトとソケットリフトに分かれます。ソケットリフトは、歯の生えていた部分から(歯を抜いたときはその穴から)、サイナスリフトは歯が生えていた部分の側面の歯肉からアプローチしていきます。ソケットリフトは、しっかりとインプラントが固定できるだけの骨の厚み(最低3~5mm)がないとできません。ソケットリフトの良い点は、骨の移植と同時にインプラントを入れることができますので、はじめに骨移植のみをするような場合よりも、歯が入るまでの期間が短縮(歯が入るまでに3ヶ月前後)されます。またサイナスリフトと比べると腫れや痛みがほとんどありません。
GBRとは「Guide Bone Regeneration」の略で、骨再生誘導法と呼ばれています。歯周病等で骨が失われて、インプラントを埋入するだけの骨量がないときに骨の再生、骨を作る治療法です。歯槽骨が不足している部分に人工骨、または自家骨を填入します。人工骨には主にハイドロキシアパタイトやB-TCPなどのリン酸カルシウム系の材料が使われますが、治療の成功率は自家骨に劣ります。自家骨を使用する場合は腸骨や顎角部、オトガイ部などから採取し、ボーンミルなどで細かく砕いて使用します。その上にメンブレンなどの人工膜を用いて歯槽骨を覆い、骨の再生を促進させます。使用するメンブレン(膜)には吸収性(放っておいても溶けてなくなってしまう)のものと、非吸収性のものがあり、非吸収性のメンブレンを使用した時は、数ヶ月後にメンブレンを除去する手術が必要になります。GBRをしてから骨ができるまで、通常約半年位かかります。