基本的にはインプラント自体は、チタンという医療用の特殊な金属の固まりなので、錆びることもありませんし、虫歯になることもありません。従ってそれ自体の耐久性は非常に高いと言えます。
ただし、どれくらい口腔内で機能するかと言うことになると生体、口腔内での他の過酷な要因が重なってきます。
インプラントは骨に支えられて、機能しますので、骨が吸収してしまうようなことになりますと、やはり天然の歯と同じように機能しなくなってしまいます。
一番危険なのは、インプラント周囲炎です。
インプラントが歯周病になった状態です。歯磨きが不充分だとインプラントの周囲に炎症が起き、インプラントを支えている骨が溶けていきます。
初期の段階なら、清掃をきちんとすることで、骨の吸収が止まり撤去する必要はないのですが、ひどくなってしまえばこれも撤去するしかなくなります。
今までの色々なインプラント治療のデータによると、患者様のお口の衛生状態がよければ、10年以上、あるいは20年、30年も何の問題も無く使用されているケースもあります。というのも、現在世界中で使用されているインプラントの原型が1965年に埋め込まれ、今も何の問題もなくこれが機能していることがその理由です。
インプラントがどれくらいもつかということは、いかに自分自身の口の衛生状態を良く保つかによって決まってくるといえるでしょう。
そのためにも定期検診は絶対に必要です。
様々な条件が整い、きちんとメインテナンスをすれば長期にわたって機能させることも可能です。長持ちさせるためには、まずインプラントの適応症例であるということが大前提で、加えて術後のメインテナンスをしっかり行うことが大切です。
では、きわめて客観的なデータをもとにインプラントがどれくらいもつのか見ていきましょう。日本歯科補綴学会誌2000によるとインプラントの生存率は、一度治療したインプラントが10年後に問題なく機能している確率は90%以上であるということです。一度埋入されたインプラントは想像以上に骨と固くくっつき、撤去するのも容易ではありません。
最近の新しいデータでは、15年経過後の生存率は、95%となっています。このように、一度成功してしまえば、長期にわたり安定して問題が起こりにくいことがうかがわれます。
最近のインプラントの成功率の高さを支えてきたのは、インプラントの表面性状の改良と術式の改善でしょう。
現在では、短いインプラントで安全に施術することが可能です。術後の腫れや痛みもほとんどでません。数%の失敗の原因は、力の負担が大きすぎる場合や細菌感染が考えられます。前者の失敗を防止するには、適切な本数や設計が必要ですし、後者には、歯周病の厳密なコントロールが必須となります。
たとえば、歯の抜けた原因が歯周病であるならば、インプラント治療前に必ず歯周病を治すことが肝心です。快適ですが費用がかかるインプラント治療です。一生使っていただくためには十分な配慮が必要なのです。
総合の生存率 | 上顎の生存率 | 下顎の生存率 | |
単独インプラント | 95.60% | 95.70% | 95.60% |
インプラント同士のブリッジ | 96.10% | 95.60% | 95.60% |
オーバーデンチャー | 95.70% | 92.50% | 92.50% |
咬み合わせは常に一定のものではありません。
治療終了後そのまま放置してしまうと、インプラントに負担がかかり、補綴物が破折したり、歯周病が急に進んだりすることがあります。そこで、インプラントを長持ちさせるために必ず定期的なメインテナンスを受けましょう。大人の方で4カ月に一回のメインテナンスが理想的です。定期的な咬み合わせのチェックやレントゲンによる診査が必要になります。
また、普段のブラッシングでは落としきれない汚れを歯科医師や歯科衛生士によるケアでフォローしていくことや、自宅でのケアが正しく行えるように、ブラッシング指導を受けることも大切です。
インプラントを入れたからといって、何か特別なことをしなければいけないわけではありません。
基本的には、天然歯と同じようにしっかり歯磨きをするだけです。とはいっても、インプラントは人工物ですから、天然歯と違って接合部(境目)があります。その部分は汚れがたまりやすいところであり、また、汚れを落としにくいところでもあります。
そこで、歯ブラシといっしょに歯間ブラシ(ワイヤー部がコーティングされているもの)や、デンタルフロスなどを使ってのケアをお勧めします。
歯間ブラシの使用方法
細い針金の周囲にブラシをつけたようなものです。歯ブラシの毛先が入りにくい歯と歯の間、歯茎の近くをきれいにします。隙間に入れて前後します。かなりの歯垢や食べカスがとれます。サイズはS、M、Lなどいろいろありますので自分にあったものを選び、入らないところには無理に入れないようにします。
デンタルフロス(糸ようじ)の使用方法
ナイロンの糸を歯と歯の間に滑らせるように入れて、歯垢や食べカスをしごき出します。隙間のせまいタイプの人に使えます。