天然歯には“歯根膜”が存在し、歯と骨がじん帯のようなものでつながっています。その中には咬む力を感知する非常に繊細な知覚神経が存在し、無理な力が加わったときに回避する能力があります。この歯根膜には一定の幅があり、物を咬むとこの幅の分だけ歯は動きます。
つまり歯根膜はクッションのような役割をしています。この『クッション』が噛む力をコントロールするのに非常に大切です。
この血液供給により※歯周ポケットの内部には好中球(細菌と戦う血液の成分の一つ)が存在し、ポケット内部に細菌が侵入してもそれを排除しようとする働きがあります。
歯肉は健康な状態で歯と歯肉の間に1~2ミリ程度の溝があります。汚れや細菌が溝にたまり歯周病菌が内部で炎症を起こすと、溝の周囲の歯肉が腫れて膨らむため、ポケットのような袋状の空間が出来上がります。
これを歯周ポケットと呼びます。
骨とインプラントがダイレクトに接触しているため、咬む力によって働くことはほとんどありません。そのため噛合せに問題がある場合には無理な力(歯ぎしりなど)がインプラントに直接影響を及ぼします。インプラントの失敗の多くは噛合せによるものです。被せ物を装着した時には、そうならないように噛合わせの調節を行いますが、時間の経過とともに噛合せは変化し、インプラント部に負担がかかってくることがあります。
水平的な繊維の付着は比較的に弱いため、剥がれやすく、炎症が深部へ起こりやすくなります。
好中球の出現が乏しく、外敵侵襲に対する抵抗力が低くなります。インプラントは、炎症に対する防御機構が非常に弱いため、いったん炎症が進むと天然歯より早く骨の吸収が進行していきます。インプラントが歯周病になった状態をインプラント周囲炎と言います。さらにインプラントは、感染を起こしても天然歯のように腫れる等の自覚症状が認められないことが多いので注意が必要です。
インプラントおよび周囲組織をつい歯と同様に考えがちですが、全く異なるものと考えてください。インプラントについて考える際には、2つの重要な観点があります。
第一は病理組織的観点ですが、乳歯、永久歯を含め歯牙は発生という過程において形成される生体の器官です。インプラントはどんなに生体に親和性をもっていようが、非自己であることは変わりません。加齢とともに変化する生活組織とは異なり、代謝はしません。また、インプラントを取り巻く周囲組織も、天然歯の歯周組織とは異なり、異物に対する生体反応を示しているため、天然歯とインプラントとでは刺激に対する反応も異なります。
第二の観点としては、インプラントの有する機能面があります。患者様、歯科医ともに天然歯と同等の機能を有するのではないかと錯覚するほど類似しています。しかし、感覚機能の欠落、被圧下における反応など、機能下においても天然歯とは異なる点が多く、「第二の永久歯」とは考えないほうがよいでしょう。