糖尿病の患者様の治療で考慮する点は、主に以下の2つが挙げられます。
(1)細菌の侵入に対して抵抗力が弱いすなわち手術を行った部位が感染しやすかったり、傷の治りが一般的にやや遅れる場合もありますが、抗生物質の適切な内服など術前から感染対策を十分にしておけば、問題なくインプラント手術は可能です。
(2)自己注射のタイミング
血糖降下剤の内服やインスリンの自己注射をされている場合、インプラント手術当日の内服や自己注射のタイミングに注意が必要です。
手術の後でご飯を召し上がりにくくなった場合、いつも通りに決まった時間に内服や注射を行ってしまいますと、血糖値が下がりすぎてしまい低血糖症状が出現してしまいますので、担当歯科医の十分な医学的知識が不可欠です。
一般的に、インプラントは以下の基準となる値を参考に治療が行われます。
なお、重症の場合には必要に応じて患者様の内科主治医と連絡を取ることにより、インプラント手術は安全に行えます。
一般的に高血圧症とは最高血圧140mmHg以下・最低血圧90mmHg以下と定義されています。
高血圧患者様に何の準備もせずに治療を行うと、緊張感や不安感のため、血圧が10~30程度上昇したり、最高血圧が190以上に達すると術中気分が不快になったり動悸を訴える場合があります。
また、局所麻酔薬の中に血圧を上昇させる成分が少々添加されています。
そんな時には無痛鎮静法(点滴麻酔)をもちいれば、
手術をリラックスした状態で受けて頂くことによって、緊張や恐怖心による血圧の上昇を抑制することが可能です。
また重度の高血圧症の場合には、必要に応じて患者様の内科主治医との厳密な情報交換の必要があります。
狭心症・心筋梗塞を罹患されたことのある患者様では、血液をサラサラにするためにバファリンやワーファリンなどを内服されています。この薬により手術中に血が止まりづらいことがあります。
以前までの学説では、これらの薬を1週間程度中止しなければ手術ができないと言われていましたが、最近では内服を継続したまま手術を行っても、止血操作を適切に行えば問題はないとされています。
いずれにせよ、
上記の場合、内科主治医と密接な連携をとり、手際のいい手術を行う必要があるでしょう。
脳の血管が詰まる脳梗塞になりますと、片方の手が麻痺することがあります。このような患者様が複雑な入れ歯をしていますと、ご自身ではずしたり洗ったりすることが困難になり、ご家族の方のお手を煩わせたり、不潔になった義歯をつけっ放しにせざるをえなくなります。
また、脳梗塞患者様は嚥下障害(食べ物を飲み込みづらくなる)を伴っていることもあり、部分入れ歯をしていますと、誤って飲み込んでしまったり、肺の入り口にひっかかった場合は窒息する危険性もあります。
インプラント手術で注意する点は、脳梗塞の方は血をサラサラにする薬を服用されている場合が多いので、内科担当医との連携をとって安全にインプラントをすることが望まれます。手術の後1週間ほどすれば薬を再開できますし、その後はその薬がインプラントに影響することはございません。
骨粗鬆症は、腰・腕・カカトの骨などの骨密度および量的な減少を特徴とする疾患です。
インプラントを埋める顎の骨には、あまり関係性はないという研究結果があり、治療には全く影響はありません。
腎臓病の患者様は、感染に対して抵抗力が低下する場合がありますがインプラントは、ほとんどの場合治療は可能です。
腎不全で血液濾過透析治療を受けている場合、インプラントは、内科主治医と相談を必要とする場合があります。
術後に内服していただく抗生剤により肝機能が低下する場合があります。
この場合のインプラントは、肝代謝性ではなく、腎排泄性の抗生剤を選択する事によって治療を行うことが可能です。