歯を虫歯や歯周病、外傷などで失った場合、昔はブリッジや入れ歯でしか歯を補うことができませんでした。ブリッジは例え隣の歯が悪くなくても削らなくてはならず、入れ歯は取り外しが必要で違和感が強く、見た目にも悪くあまり硬いものは噛むことができないものでした。しかしインプラントとは、歯が無くなった部分に、天然歯の根の部分の代わりをする医療用の特殊な金属で作られた人工歯的な歯根を入れて、再び噛む機能を回復させる治療方法のことです。
現在多く行われているインプラントは純チタンか、チタン合金で出来ています。形はネジのような形や、シリンダー状、歯の根のように先に行く程細くなった形など多種多様になってきました。1本か数本、あるいはすべての歯を失った場合にも、インプラントは半永久的に天然歯に近い歯を得る方法として有効です。
「何故インプラント治療が良いのか?」「従来のブリッジや入れ歯でもいいのではないか」と思う方もおられるでしょうがブリッジや入れ歯の短所を考慮しますと、インプラント治療が可能であれば、現在の歯科治療のレベルでは、コストを省いて最善の補綴方法と言えるでしょう。
その一番の理由は、他の方法では失われた歯根まで回復できないためです。そのためどんなに良く出来た入れ歯でも、元々の天然歯の噛み合わせる力の3分の1程度でしかありません。インプラントなら骨に埋まった根の部分が骨としっかり結合しているので、噛む力も天然歯と比べて遜色(そんしょく)がありません。これは咀嚼能率(そしゃくのうりつ)を調べた研究データでも証明されています。
あごの骨には自然の歯と同じように適度な刺激が伝わり、力をかけることができることから、顎骨の吸収や萎縮も少なくなることが知られています。インプラントでは、人工歯根が顎の骨に固定されるため取り外す必要はなく、力を入れて噛むことができます。食感も天然歯に近く、食べる楽しみを取り戻すことが出来ます。
実際インプラントの構造はどのようになっているのでしょうか。
挿絵を交えて構造を解説いたします。
構造としては、おおむねフィクスチャー(歯根部)、アバットメント(支台部)、上部構造の三つに分けられます。
直接、歯槽骨の中に埋められる部分で、チタンかチタン合金で作れらています。太さは約4mm、長さは約1cm前後です。
チタンは、整形外科にも応用されており、非常に生体親和性が高いため、金属アレルギーの方も安心して治療が受けられます。
フィクスチャーの上に取りつけられる部分で、セラミッククラウン等の上部構造を支える役割を果たします。
通常チタンかチタン合金製ですが、審美性に優れたセラミック製(ジルコニアなど)のものもあります。
上部構造補綴物は、白い素材が主となります。
白い歯の素材としては、内側に金属の裏打ちのあるメタルボンドと、セラミックだけでできているオールセラミックスなどがあります。
両側の健康な歯を削って土台にし、ブリッジで治療します。
本欠損にインプラントを埋入し人工の歯を単独で装着します。
部分入れ歯で治療します。健康な隣の歯に維持のための釣をかけるため、歯に負担がかかります。
必要な本数のインプラントを埋入し、それぞれ単独で治療するか、インプラント同士を連結したブリッジとします。
土台になる歯がないため総入れ歯となります。うまく合わない場合は食事が美味しくない、上手く話せない、外れやすいなどの問題が生じることがあります。
インプラントを土台にして入れ歯を安定させ、動かずしっかりした義歯にすることが出来ます。またあごの状態によってはインプラントによって一本ずつの歯を自然な状態で再建することも可能です。